連結納税を導入するメリット及びデメリット
こんにちは。渋谷の税理士ライブラです。
本日は、連結納税を導入するメリット及びデメリットについて考えていきます。
【連結納税導入のメリット】
①損益通算
グループの中で、赤字の会社と黒字の会社がある場合、会社間の赤字と黒字を相殺できるというのが、連結納税を導入する際の最大のメリットです。
グループ会社の中に、毎年赤字続きでなかなか浮上できない子会社があるとします。
一方で、毎期継続して黒字を計上している会社からは、当然に法人税がキャッシュアウトしていきます。
もしこれらの会社の損益を通算できると、グループ全体として納税額を削減でき、キャッシュ・フローの改善します。
<留意点>
・相殺できる部分は、「法人税」(国税)部分のみになります。
住民税と事業税(地方税)部分については、相殺する仕組みがなく、単体で確定申告をした場合と同様です。
・連結納税が適用される前に子会社で蓄積された青色欠損金は、連結納税上繰越欠損金には取り込めません。
以前はそのまま切り捨てになっておりましたが、現在は緩和措置が図られ、その子会社自身が捻出する利益との相殺のみ可能となりました。
②子会社資産の含み損を活用した繰戻還付
連結納税制度の適用開始時(又は連結グループへの子会社の加入時)には子会社の資産を原則として時価評価します。
この際に、子会社の資産で評価損が生じた場合には、連結納税の適用開始前(又は加入前) の子会社のその適用開始前(又は加入前)の所得と通算ます。
その結果、子会社の含み損による繰戻還付の効果を享受することができます。
不動産に含み損のある物件を抱える子会社があり、現在は安定的に黒字が計上されていれば、連結納税を導入することにより節税対策として大きな威力を発揮します。
逆に、子会社の資産で評価益が生じた場合には、適用開始前(又は加入前)の子会社の欠損金と通算されます。
その結果、子会社の繰越欠損金が消化できると同時に、その資産の売却時の利益を圧縮することができます。
<留意点>
・親会社の資本金が5億円以上ある場合は、子会社の資本金に関わらず繰戻還付が使えませんので注意が必要です。
・繰戻還付が受けられるのは「法人税」(国税)部分のみであり、住民税と事業税(地方税)部分については適用がありません。
【連結納税導入のデメリット】
①各種制限
決算期を統一しなければなりません。この他にも関係会社の運営に一定の制限があります。
②子会社の資産に含み益がある場合
連結納税に取り込む子会社の資産に含み益があり、それと相殺することが可能な繰越欠損金がない場合、子会社資産の時価評価により、多額の納税が発生します。
③中小企業の軽減税率の適用社数
中小企業は、年間課税所得の800万円までは軽減税率が適用されます(800万円超は実効税率が約38%ですが、800万円以下の部分は約23%まで軽減されます)。
この軽減税率は、各社で単独申告をしている場合はそれぞれの会社で適用できますが、連結納税だと、全体で1社分の適用となってしまいます。
ただし、親会社の資本金が5億円以上の場合は、連結納税が導入されていなくても子会社は軽減税率が適用されませんので、このデメリットについて考える必要はありません。
④中小企業の交際費枠の適用社数
中小企業は、年間の交際費のうち600万円までは90%の損金算入が可能です。
この交際費枠は、各社で単独申告をしている場合はそれぞれの会社で適用できますが、連結納税をしてしまうと、全体で1社分の適用となってしまいます。
ただし、親会社の資本金が5億円以上の場合は、連結納税が導入されていなくても子会社は交際費が全額損金不算入となってしまいますので、このデメリットについて考える必要はありません。
⑤事務負担及びコストの増加
連結上の相殺取引を常に把握する必要が生じるため、事務負担は確実に増加します。
また、制度導入初年度は金銭的にも、時間的にも諸々のコストが掛かります。
実務でよく出くわすのは、導入時のメリットとデメリットを比較衡量して導入の決断をしていないことが多いです。
経営者の言うがままに導入してしまった…
税理士に言われるがままに導入してしまった…
こうしたケースにおいては往々にして、上記のメリットが享受できていないばかりか、逆にコストだけがかさんでしまったという非常に残念な結果に終わっています。
以上 ライブラでした。
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